ジャルディニエ・キリクイの庭しごと

神奈川で庭づくり・庭の手入れをしているキリクイのブログです。

雑草とのつきあいかた

「雑草」の定義

雑草の定義はいろいろあると思いますが、深夜のテレビ番組で紹介されて有名になった(?)のが、アメリカ雑草学会(WSSA)による定義です。

雑草とは、「人類の活動と幸福・繁栄に対して,これに逆らったりこれを妨害した りするすべての植物」である。ここまで思い切った定義になると、ちょっと笑ってしまいますよね。

とりあえず、ここでは、「植えた覚えがないのに勝手に生えてくる草」ぐらいの定義で話を進めてまいります。

雑草とのつきあいかた

日本列島の多くの地域は温暖湿潤で、ほうっておけば草が生えてくるという恵まれた環境にあります。ただ、庭を楽しむうえでは、雑草とどうつきあうかが結構大きな問題になってきます。草取りをすればいいと言ったって、夏の暑い盛りにぐんぐん成長するような雑草を相手にするのは本当に大変ですよね。

そこで、草取り以外の方法で、庭の雑草とつきあう方法を2つご紹介します。

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 その1 防草シート

建物裏の通路など、あまり手入れに時間をかけたくないような場所では、雑草が生えないようにするのが一番でしょう。

オススメは防草シートです。
施工は比較的簡単、不要になったら撤去することもできるというのが利点でしょう。水を通すという点も良いところです。

防草シートを敷く手順です。

1.防草シートを買う
安価な製品は効果もそれなりです。ここは迷わず品質の高いシートを選びましょう。

2.雑草を除去し、土を平らにならす。
できる限り雑草は根から取り除いておくと、後々差がでてきます。特に、地下茎で増えるタイプの雑草、ドクダミヤブガラシ、スギナなどは、根をなるべく残さないようにしたいものです。土は平らにならし、表面の小石などは取り除いておきます。なお、防草シートの上に砂利などを敷く予定なら、仕上がり高さを決めて、そこから砂利の厚み分だけ土を取り除いておく作業が必要になる場合があります。こういう作業を丁寧にやっておくと、仕上がりが断然きれいになります。

3.シートを敷く
シートはハサミで切れるので、敷きたい場所の形状に合わせてカットします。固定には、専用のピンを使います(石の多い土だったりすると、ピンがうまく入っていかなかったりしますが……)。シート上に砂利などを敷くのであれば、木ねじのようなもので仮固定しておくだけでも十分な場合があります。シートの継ぎ目は10cmほど重ね、できればテープを貼っておきます。

防草シートの施工は確かに難しくはないのですが、きれいに仕上げ、効果を長持ちさせようと思ったらそれなりの手間がかかります。そこはご覚悟を。

なお、防草シートも完璧なものではありません。シートの継ぎ目や端から雑草が出てくることがあります。またシートの上で雑草が発芽することもあります。草取りの手間は激減しているはずなので、出てきた雑草については、小さいうちに取り除くようにしましょう。

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その2 草刈り

住宅の庭で、草刈りで維持するようなスペースは少ないかもしれませんが、知っておくと奥深い世界が待っています。

草刈りは、人間が干渉することで、ある程度自然をコントロールしようとする技術です。育てる植物すべてを人間が決める花壇でもなく、放任した自然の状態でもない、その中間くらいの空間をつくろうとするのが草刈りです。

草を刈ると、地面に届く光が多くなり、背丈の低い植物や成長の遅い植物にも生育のチャンスが生まれます。植物同士の競争に干渉し、強いものばかりが生き残るのではなく、多くの種類の草花が生育できるようにするというわけです。実際、カタクリのような里山の雑木林の草花も、人間による草刈りに依存して生育してきた一面があります。

こうなってくると、雑草が俄然おもしろくなってきます。草刈りの時期、頻度、刈る高さによって、生育する植物の種類が変わってきます。実に奥の深い技術です。

Kirikuiでは、「野の花マット」という野草(雑草と言ってもいいですが……)を寄せ植えした製品を扱っています。スミレやホタルブクロ、オミナエシなど四季折々の野の花を楽しめるものなのですが、これも年2回ほどの草刈りによって管理します。

もし庭をお持ちであれば、芝生もいいんですけど、草刈りで維持するような草地スペースをつくると庭がよりおもしろくなるのではないかと思います。

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雑草という名の植物はない

日本語には、雨や魚、植物に関する語彙が多いと言われています。反対に、家畜に関する語彙は少ないとか。ある物事に関する語彙の多い少ないは、その言語を話す人々の関心の高さを反映していると考えられます。時雨、夕立、梅雨、五月雨、秋霖など、「雨」に関する言葉を多く持つ日本人は、実際雨の多い地域に暮らし、自ら望んだわけではないにせよ、雨に強い関心を寄せざるを得なかったのかもしれません。

「時雨」に対応する英単語は存在しません。ということは、つまり、英語話者にとって「時雨」という気象現象は実在しないということになります(英語話者が住む場所では秋から冬にかけてにわか雨が降らないということではなくて、それを一つの気象現象として区別していないということです)。もちろん、日本語に「時雨」という言葉があって、どういう雨を指すかということを知れば、英語話者も「時雨」を現実として捉えることができます。日本人でも「時雨」という言葉を知らなければ、「時雨」を「時雨」として認識することはなく、ただの「雨」になるでしょう。

名前があってはじめて、そのモノなり現象なり概念なりは現実のものになります(人間から見て、という話です)。

「雑草という名の植物はない」という言葉が、植物学者・牧野富太郎博士の言葉とも、昭和天皇の言葉とも伝えられています。名前を知らなければ、雑草は雑草でしかないでしょう。なにしろ名前のないものは認識のしようがないからです。でも、名前があることを知れば、その草は「カタバミ」となり、この草は「ノチドメ」となり、あの草は「ウツボグサ」となります。その人にとっての現実の幅が広がり、世界が違って見えるようになります。

お盆休み明けの資材置き場には、ヒメジョオンとヒメムカシヨモギアカバナユウゲショウとニシキソウとエノキグサとタケニグサとアメリカセンダングサエノコログサとメヒシバとカタバミドクダミと……。うーん、名前がわかっても、そんなに愛着は持てない(-”-;) それに外来雑草の多いこと。

 

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