ジャルディニエ・キリクイの庭しごと

神奈川で庭づくり・庭の手入れをしているキリクイのブログです。

「時間」について

もっと速く!

「時間」というものは過去から未来に向かって一定の速度で流れていると僕らは考えていますが、それは人間の思考が生み出した概念であって、たとえば都会を離れて自然のど真ん中で過ごしてみれば、それとは違う「時間」の流れを実感することができます。どこにも出かけなくたって、楽しい時はあっという間に過ぎ、退屈な時は5分が1時間にも感じられるように、「一定の速度で流れる時間」なんて実在しないことがわかります。

ビジネスにとっての時間は、一定の速度で流れるどころか、加速し続けるという性質を持っています。経営はスピードだというような格言を耳にするように、ビジネスの世界で生き残るには、より速く走り続けることが求められます。

この加速し続ける時間の概念に基づいてなんでもかんでもやろうとするあまり、自然に許容範囲以上の負荷をかけてしまったり、人の心に大きな負担をかけてしまっているのかもしれません。

だから人は、山に登ったり、波に乗ったり、手料理をつくったり、花を活けたり、いろんなことをして、バランスを保っているのでしょう。

僕には、力を入れている趣味は特にないし、Kirikui の仕事が生活の中心にあるので、そこで「もっと早く、もっと速く!」と言われ続けるのはちょっとしんどい。どうにかして「ビジネスの時間」と折り合いをつけないと、追い立てられて人生が終わってしまいます。

 

受け継がれてきた文化に敬意を払う

新潟に暮らす友人から「鳥追い」という小正月行事のことを聞いたことがあります。旧暦1月の夜、子どもたちが鳥追い唄を歌いながら練り歩き、田んぼを荒らす鳥(トキ)の霊を島に流すという行事です。

「害鳥」に悩んでいるのなら、トキをみんな捕まえて殺してしまうほうが、人間にとってもっとも効率よく利益が最大になるように見えます。
しかし、生態系という複雑なシステムに種の絶滅のようなことを人為的に起こすことが、どんな結果を招くのかは予想がつきません。ある生き物の絶滅によって他の生き物が爆発的に増え、別の問題が発生するという可能性は十分に考えられます。
鳥の霊を島流しにするという一見なんの利益もないような儀式が、人間の欲望と自然の間のバランスをとり、人類が自滅するのを防いできたのかもしれません。

効率を求め加速し続けるビジネスに歯止めをかけるためのヒントがここにあるような気がします。つまり、現代の価値基準から考えると無意味にすら見える「文化」に敬意を払うということ。目先の「コスパ」だけで判断しないということ。

庭師が受け継いできた技は、植物の、自然の時間の中で育まれてきたものです。
その中にはいわゆる「科学的根拠」に欠けるものもあるけれど、そういうことこそ大事にしなければいけないのではないかと思ったりもします。

Kirikui での取り組みはまだ始まったばかりですが、一日も早く(おっと!)、かたちにしたいと思っています。

 f:id:kirikui:20160722172146j:plain

www.kirikui.com