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ジャルディニエ・キリクイの庭しごと

神奈川で庭づくり・庭の手入れをしている小さな会社、キリクイのブログです。

赤いモルタルの秘密 (dialogue#2)

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堀池 Kirikuiの新しい工法、「瓦砂 × 酸化マグネシウムモルタル工法」についてお話をしましょう。

佐藤 いつからそんな名前になったんですか?

堀池 じゃあ、(仮)ということで。「瓦砂」のことはとりあえず置いておいて、まずは「酸化マグネシウムモルタル」とは何かというところから始めましょうか。

 

土壌固化材としての酸化マグネシウム

堀池 一般的にモルタルと言えば、セメントと砂と水を混ぜたものを指しますよね。ブロックやレンガを積んだりするときに使います。

佐藤 「セメントモルタル」と言ったりもしますね。

堀池 そのセメントの代わりに酸化マグネシウムを混ぜたものが「酸化マグネシウムモルタル」ですね。

佐藤 そうです。酸化マグネシウムを混ぜるとなぜ固まるかということなんですけど、説明する自信がないので、今使っている酸化マグネシウム系固化材「ジオベスト」の説明書きを読みますね。
「ジオベストは、土壌と混ざると土壌中の水分と結合(水和反応)し、水酸化マグネシウムとなり、その後空気中の炭酸ガスと反応して塩基性炭酸マグネシウムを形成します。これが土粒子同士の接着をもたらします。セメントも水和反応により硬化していきますので、よく似ています。マグネシウムの自硬性は30~40%てす。残りの60~70%は土壌中の微量金属類と長時間かけて反応し硬化します。硬化すると、水がかかっても硬化体は変化しません」

堀池 化学の基礎知識がない僕には、ちょっと難しいな(笑)

佐藤 僕もよくわからないです(笑)。ともかく、酸化マグネシウムと土を混ぜると固まるというのは間違いない。

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※(株)武井工業所「ジオベスト」パンフレットより

 

堀池 酸化マグネシウムを、セメントの代わりに使うメリットは何ですか?

佐藤 弱アルカリ性なので、生物や環境への影響が少ないという点ですね。セメントは強いアルカリ性です。モルタルやコンクリートを解体したものは産業廃棄物として処分しなければなりませんが、酸化マグネシウムで固めた土は、壊してそのまま土に戻すことができます。

堀池 強度はどうなんですか?

佐藤 酸化マグネシウムモルタルとセメントモルタルの比較データはないのでわかりませんが、酸化マグネシウムで固化した土とコンクリートを比べると、コンクリートのほうが強度は大きいです。

堀池 そりゃそうですよね。コンクリートには砂利や砕石が入ってるわけだし。

佐藤 今のところ、花壇や花台など、それほどの強度が要求されない場所に限って酸化マグネシウムモルタルを使っています。ブロック塀なんかをつくるときにはセメントモルタルを使えばいいし、そこまで頑丈につくらなくていいものなら、環境への影響の少ない酸化マグネシウムモルタルを選べばいいと思うんです。

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酸化マグネシウムモルタルで積んだレンガの花台

 

先人の知恵を活かす

堀池 この「ジオベスト」っていう製品には「土舗装固化材」と書いてありますよ。土を固めて舗装するためのものということですよね。

佐藤 そうです。植栽帯の表土を固めて雑草が生えないようにしたり、公園などで土の風合いを残した園路をつくったり、そういう使われ方をしていますね。僕も、庭で土のテラス、土間みたいなものですね、そういうのを作ったりもしています。

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酸化マグネシウムで庭土を固めて作った三和土風テラス

 

堀池 今回の話は、それとは違いますね。レンガを積んだりするために使うという話で……。

佐藤 万里の長城ってありますよね。中国の。そこの石だったか、レンガだったかを積むのに酸化マグネシウムが使われていたそうなんです。

堀池 そんな古い歴史があるんだ。

佐藤 だったら、酸化マグネシウム系土舗装固化材を、レンガ積みなんかにも使うことができるんじゃないかと思ったんです。それで、川砂と酸化マグネシウム系固化材を混ぜて、実験してみました。そうしたら、川砂でも固まることはわかったんですけど、セメントモルタルのような粘りがなくて、レンガ積みなどに使うのは難しそうだなという感じでした。

堀池 粘りが足りない、と。

佐藤 そこで海藻糊を入れてみました。海藻から作られた糊。僕は「粉つのまた」というのを使っています。漆喰などに混ぜられるもので、保水性を高めて作業性を良くするそうです。酸化マグネシウムと川砂を混ぜたものに海藻糊を足すと粘りが出て、セメントモルタルのように使えるようになりました。

堀池 左官の知恵ですね。

佐藤 ただ、水分量の調整が難しいんです。多すぎる水は強度を低下させますが、水が少ないと作業性が悪い。しかも、レンガの目地なんかに使うときは、レンガが水を吸うので、そのあたりも考慮する必要があります。海藻糊の量も調節しながら、適切な水分量にしなければならない。マニュアルはないし、誰も教えてくれないことですから、これはもう試行錯誤しながら、もっともっと質を高めていきたいと思っています。

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酸化マグネシウムモルタルで積んだレンガの花壇

 

サンド・ウォーズに一滴の水

佐藤 酸化マグネシウムと川砂でつくる「酸化マグネシウムモルタル」はうまくいったのですが、まだ改良したい点がありました。

堀池 川砂ですね。

佐藤 ええ、そうです。川砂って、川で採れる砂ですよね。そんなにガバガバ採っちゃっていいものなのか、疑問に思うんですよ。川砂をゴッソリ持っていかれたその場の環境はどうなるんでしょう。

堀池 確かにそうですよね。

佐藤 実際、日本国内で川砂が採取できる場所は少なくなっているようですし、海外では違法採取も問題になっているらしいです。

堀池 この前、テレビで「サンド・ウォーズ」という言葉を聞きましたよ。「砂の戦争」ですね。砂って、コンクリートの骨材として建築関係に大量に使われるわけですけど、世界的に需要が高まっていて、砂をめぐって争奪戦が起きているらしいんですよ。当然、違法採取や環境破壊という問題が起きていて、砂を採りつくして島が丸ごとなくなったりしてるという話です。

佐藤 「Kirikuiは環境に配慮した庭づくりをしています」なんて言いいながら、川砂を使い続けるのは問題がありますよね。

堀池 「このウソつきー」とか言われたり。

佐藤 そこで、川砂に代わるものとして、廃瓦を粉砕して作られたリサイクル砂を使うことにしたんです。まあ、Kirikuiが川砂を使うのをやめたって焼け石に水、一滴の水で「サンド・ウォーズ」の戦火は消せるはずもないんですけど……。ともかく、川砂の代わりに瓦を粉砕した砂、瓦砂を使ってみよう、と。

堀池 この下の写真の目地がそれですね。赤い。

佐藤 ええ、瓦砂が赤いので、瓦砂を混ぜた酸化マグネシウムモルタルも赤くなるんです。結構インパクトが強いので、目地なんかで表に出る場合には、積むレンガの色には気を使わないといけないとは思うんですが……。

堀池 合わせてみたら、意外とどんな色でもいけるかもしれないですよ。瓦ってことは、粘土を焼いた色ですよね。自然の色だから、馴染むんじゃないかな。

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瓦砂×酸化マグネシウムモルタルを目地に用いたレンガ敷き

 

赤色の秘密

堀池 そもそも瓦を粉砕した砂は何で赤いんでしょうね。

佐藤 鉄分の色らしいですよ。酸化鉄。詳しく言うと、酸化第二鉄。Fe2O3。

堀池 鉄がFeで、酸素がO。また化学かあ。高校卒業と同時にきっぱりと縁を切ったつもりだったのに。こんなところで再会するなんて……。

佐藤 まあ、そう言わずに。僕も化学は苦手で、学校の試験で落第点をとったこともあります。確か、モル(mol)がどうとかいう話で……。

堀池 ああ、モルね。0.012 キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい要素粒子を含む系の物質量だね。

佐藤 ……。

堀池 ウィキペディアをちょっと……。

佐藤 ともかく、酸化鉄の話ですけど、酸化第二鉄は赤い色をしているそうです。土中にも鉄分は含まれていて、有機物が多い土は黒く見えますが、有機物などが少ないと鉄分の色が目立って赤く見える。いわゆる赤土ですね。

堀池 瓦の原料となる粘土にも鉄分が含まれている、と。

佐藤 一概には言えなくて、たとえば石州瓦の原料の粘土には、鉄分がほとんど含まれていないため、白い色をしているそうです。

堀池 あれ? 石州瓦って赤い瓦じゃなかったでしたっけ? 島根のほうの。

佐藤 あの赤は素地の色ではなくて、釉薬の色みたいです。鉄分を多く含む釉薬で赤くなるそうです。

堀池 そうか、瓦の表面の色は釉薬の色だったりするから、素地の色は違う。

佐藤 詳しい化学反応はちょっとわからないんですけど、鉄分を含む粘土を酸素の多い状態で焼成すると、酸化第二鉄の赤が目立ってくるようです。

堀池 素焼きの植木鉢が、赤いものから白っぽいものまであるのも、原料の粘土に含まれる鉄分の量の違いなのかな?

佐藤 そうかもしれませんね。ちなみに、同じ粘土でも焼き方によって仕上がりの色は変わるみたいです。酸素の少ない状態で焼くと、酸化第一鉄、FeOができて、それは黒い色をしているので、仕上がりも黒っぽくなったりするそうですよ。

堀池 本日の化学式の受付は終了しております。

佐藤 あらら(笑)

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瓦砂×酸化マグネシウムモルタル

 

佐藤 赤色顔料のベンガラは、酸化第二鉄が発色の主成分だそうです。ベンガラという呼び名は江戸時代頃からのようですけど、酸化第二鉄の赤色は縄文時代の土器からも見つかっているらしいんです。

堀池 そんな昔から。

佐藤 ラスコーの洞窟壁画にも酸化第二鉄の赤が使われているみたいです。

堀池 ラスコーと言えば、ちょうど今(註:2017年2月19日まで)、上野の国立博物館で「ラスコー展」をやってますよね。ちょっと興味湧いてきたなあ。

佐藤 赤という色は、朝日の色であり、夕日の色であり、血液の色であり、炎の色でもある。人類にとっては、やっぱり特別な色なんでしょうね。その色を表現する材料の一つが酸化第二鉄で、それは人類誕生の瞬間から共にあった赤。そう考えてみると、この瓦砂の色にもロマンを感じませんか?

堀池 ロマンはちょっと大袈裟かな……(笑)。それにしても、クロマニョン人に、万里の長城、この赤いモルタルがずいぶん遠くまで連れて行ってくれたもんですね。

佐藤 まだまだ横道がたくさんあるんですけど、キリがないので、このへんで……。

堀池 宣伝くらいしておいたほうがいいんじゃないですか?

佐藤 そうですね。それでは……。瓦リサイクル砂を骨材とした酸化マグネシウムモルタルは、環境への影響を抑えながら、レンガや石材の固定、舗装など、庭づくりのさまざまな場面で活用することができます。施工のご相談は「ジャルディニエ・キリクイ」へお気軽にどうぞ。

堀池 この赤いモルタルの名前も募集中です。

佐藤 え?

堀池 だって、「瓦砂 × 酸化マグネシウムモルタル工法」じゃ長すぎるでしょう。ご応募お待ちしてまーす。

 

www.kirikui.com